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東日本大震災から学ぶ災害関連死の教訓|事前にできる備えと対策とは

東日本大震災では、直接的な被害だけではなく災害関連死も多く見られました。精神的ストレスが溜まりやすい避難所生活での災害関連死を避けるためにも、事前の備えや対策は欠かせません。本記事では、東日本大震災における災害関連死についてや、事前の備え、避難所生活中の対策について紹介します。

災害関連死とは

災害関連死に関する新聞記事

災害関連死とは、地震や津波などの災害による直接的な原因ではなく、避難生活中の健康悪化や体調不良が原因で間接的に命を落とすケースのことです。地震の場合は震災関連死とも呼ばれます。

内閣府の資料によると、災害関連死は「当該災害による負傷の悪化、または避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき、災害が原因で死亡したものと認められたもの」と定義されています。

災害後の避難生活が長期化すると、持病の悪化や新たな病気の発症により命を落とすリスクが増加する傾向です。適切な避難所の環境や医療的ケアが提供されない場合、災害関連死のリスクはさらに高まります。

参考資料:内閣府政策統括官(防災担当)付 参事官(被災者行政担当)付「災害関連死について」

東日本大震災における災害関連死

東日本大震災の浸水プレート

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震や津波による直接の被害に加え、その後の避難生活や医療不足による災害関連死が数多く発生しました。東日本大震災における災害関連死の詳細なデータと主な原因を紹介します。

災害関連死の割合

東日本大震災では、死者・行方不明者が約22,000人にのぼり、そのうち災害関連死として認定された人数は3,802人でした。現在もすべての災害関連死が把握されているわけではないので、実際にはさらに多くの人々が災害関連死に該当しているかもしれません。

災害発生から1週間以内に亡くなった災害関連死者は全体の12%、1ヵ月以内では32%を占めています。また、災害関連死者の約9割が66歳以上の高齢者であることが明らかになっています。

参考:復興庁 東日本大震災における震災関連死の死者数(令和5年12月31日現在 調査結果)

災害関連死の原因

災害関連死の原因として最も多かったのは、避難所等における生活の肉体・精神的疲労によるものでした。次いで、 避難所等への移動中の肉体・精神的疲労、病院の機能停止による初期治療の遅れ等といった原因も。これらの原因がきっかけとなり、持病の悪化やエコノミークラス症候群、疾患などで亡くなっている例が見られました。死因では、肺炎や気管支炎などの呼吸器疾患、脳卒中などの循環器疾患が多い傾向にあります。

また平成24年のデータでは、持病がある、要介護認定を受けている、服薬治療をしているといった既往症のある人の割合は災害関連死者数全体の6割にのぼることが明らかになっています。

【事前の備え】災害関連死を防ぐためにできる対策

並べられた防災グッズ

災害関連死を防ぐためには、事前の備えが重要です。特に避難所での生活環境を整えるために、簡易トイレ、非常食、燃料などの備蓄は欠かせません。災害発生前に行える対策を紹介します。

防災テントを用意する

人が密集する避難所でプライバシーを確保し、精神的なストレスを和らげるためにも防災テントを準備しておくのがおすすめ。プライバシーを確保するために車内で過ごす人もいますが、防災テントの方が体を自由に動かしやすいのでエコノミークラス症候群のリスクを少なくできます。ワンタッチで設営できるものであれば、アウトドアに慣れていない人でも使いやすいでしょう。ただし、他の人の迷惑にならないように、テントの設営は屋外で行う必要があります。

簡易トイレを用意する

水が流せなくなった洋式便座のトイレに、袋を取り付けて使用する簡易トイレの用意もしておきましょう。ライフラインが止まると水洗トイレは使えません。また、仮設トイレが被災地に到着するまでには時間を要します。多くの人が利用し、不衛生になりやすい避難所のトイレに行くのを避けるために水分や食事を摂らないというケースも見られますが、体力低下、脱水症状、エコノミークラス症候群のリスクを高めてしまう危険な行為です。

ライフラインの復旧は一般的に3日程度と言われているため、最低でも3日分、可能であれば1週間分の簡易トイレを準備しておくと良いでしょう。1日のうちトイレを使用する回数は成人の場合5〜7回と言われていますが、生活や体質などでも差があるので1日何回トイレにいくか計算しておくのがおすすめです。

備蓄品を確保する

簡易トイレだけではなく、水や食料、その他の防災グッズも最低3日分、余裕を持って1週間分の備蓄をしておきましょう。避難所生活では食生活が偏って栄養失調に陥るケースも考えられるため、栄養バランスを考慮して非常食を準備するのがポイント。アルファ化米やレトルトのおかゆ、肉魚の加工食品、野菜ジュース、スープなど、保存しやすいものがおすすめです。高齢者や乳幼児、アレルギーのある人にも対応できるものだとより安全です。

持病がある人がいる場合は、療法食のストックも忘れずに行います。温かい食事は消化をサポートし、緊張を和らげる効果が期待できるため、発熱剤入りの食品を選ぶのも良いでしょう。

常用している薬をストックする

常用している薬がある場合は、非常時に備えて少し多めにストックしておきましょう。持病がある人の災害関連死を防ぐには、常用している薬を飲み続けることが重要になります。常にストックが有ると、災害発生時に薬がないという状況を避けられます。薬と一緒に、おくすり手帳や通院歴が記載されている書類などもまとめておくのがおすすめです。

ガソリン満タン・灯油プラス1缶を心がける

食料や水だけではなく、燃料の備蓄も重要です。東日本大震災では、ガソリンスタンドや製油所、油槽所、港湾などが被災し燃料の供給能力が大きく低下しました。石油供給要請数は災害発生から1週間以内で約1,500件におよび、物資などの要請の3割を占めました。震災発生時はまだ寒さが残る3月だったため、避難所のストーブ用燃料として要請するケースも見られたようです。

日ごろから灯油を1缶多めに備蓄しておくと、災害発生時でも灯油コンロを使って温かい食事ができて、ストーブで暖をとることも可能です。また、ガソリンを満タンにしておくと車内を一時的な避難場所にできて、空調や充電などの設備が使えるパーソナルスペースとして活用できます。避難生活を少しでも快適にし、災害関連死のリスクを下げるためにも燃料の備蓄も忘れないようにしましょう。

【避難所生活中】災害関連死を防ぐためにできる対策

避難所を示す看板

避難所生活中は、災害関連死の原因として最も多く見られた精神的なストレスを和らげる対策を行いましょう。併せて、エコノミークラス症候群や誤えん性肺炎などの予防をする必要もあります。

口腔ケアと感染症対策を行う

誤えん性肺炎のリスクを下げるためにも、避難所生活中も口腔ケアはこまめに行いましょう。水分が取りにくかったり歯みがきがしにくかったりといった状況が続くと、口内で細菌が増え、誤えん性肺炎を起こすリスクが上がります。体力のない子どもや高齢者は、特に注意が必要です。

対策としては、口腔ケアアイテムの使用や、ペットボトルのキャップ1~2杯程度の水でのうがいが効果的。また、感染症予防として手洗いやマスクの着用、咳をする時は口を覆うなどの対策をするとより安全です。

ストレスのケアをする

精神的なストレスは災害関連死を招く大きな原因となるため、心のケアも欠かせません。災害発生直後から数日は、安心・安全・睡眠の確保を重視しましょう。1週間~1ヵ月経過してからは、家族や近隣の人たちとの協力や支え合いが大切。飲酒は控え、イライラが強まった時は深呼吸をするなどの対策をしましょう。心的外傷後ストレス障害やうつ病、アルコール依存症などの可能性がある場合は避難所の相談窓口、医師、看護師などに相談するようにしてください。

エコノミークラス症候群対策をする

長時間同じ姿勢で過ごすと血流が悪くなり、血栓が生じて肺の血管を詰まらせてしまうエコノミークラス症候群のリスクが上がります。死に至るおそれもあるため、軽い運動をする、脚を動かす、ふくらはぎをマッサージするといった対策を欠かさないようにしましょう。弾性ストッキングの着用も効果が期待できます。同時に、体内の水分が不足して血が固まりやすくなるのを防ぐために水分補給をこまめに行いましょう。

薬が必要な場合は処方を受ける

持病のある人が常用している薬がなくなった場合は、医療チームに相談して処方を受けます。お金や保険証が持ち出せなかった場合でも、被災地にいる人は平等に、無償で医療を受けられることが災害救助法で定められています。災害関連死を防ぐためにも、薬がなくなりそうな時や、体調不良を自覚している時は無理をせず頼るようにしましょう。

東日本大震災を教訓に災害関連死の予防を

備蓄をチェックする女性


災害関連死を防ぐためには、事前の備えと避難所での適切なケアが欠かせません。東日本大震災の教訓を活かし、命を守るための対策を心がけましょう。

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