地震や台風などの災害は、いつどこで起こるかわかりません。被災直後は水や食料が届かず、日常生活が一変する可能性があります。だからこそ家庭でも企業でも防災備蓄品を準備しておくことが欠かせません。本記事では、家庭・企業に必要な備蓄品リストから管理の工夫までわかりやすく解説します。

防災備蓄品が必要な理由

防災備蓄は、災害時の生命線となる大切な備えです。地震や台風でライフラインが止まると、水や食料はすぐには届かず、物流も数日間混乱します。実際、東日本大震災でも復旧に時間がかかり、多くの人が物資不足に直面しました。

だからこそ、家庭や職場では最低3日分、できれば1週間分の備蓄を用意しておくことが欠かせません。水や食料に加えて、衛生用品や日用品もリスト化し、定期的に見直して準備を整えておくことが、いざという時の安心につながります。

【家庭】防災備蓄品リスト

家庭で備えるべき防災用品は、食料や水に限らず、生活用品や衛生用品、さらには家族構成に応じた特別なアイテムまで多岐にわたります。ここでは、それらの備蓄品をカテゴリごとにチェックリストで整理しました。

食料品・水

災害時は物流が止まり、スーパーやコンビニの商品がすぐに売り切れることも少なくありません。数日間自宅で過ごせるよう、長期保存ができる食品や十分な飲料水を備えておくことが重要です。

▢ 飲料水（1人1日3リットル×最低3日分、できれば1週間分）

▢ アルファ米・レトルトご飯

▢ インスタント麺・乾麺

▢ 缶詰（魚・肉・野菜・フルーツなど）

▢ レトルト食品（カレー・スープ・おかゆなど）

▢ ビスケット・クラッカー・栄養補助食品

▢ チョコレート・飴・ようかんなどエネルギー補給食

▢ 粉ミルク・ベビーフード（乳幼児がいる場合）

▢ 常温保存できるパンやパウチ食品

▢ スポーツドリンクや経口補水液

生活用品

停電や断水が続く中で役立つのが生活用品です。照明や暖をとるための道具、情報収集や連絡手段、そして応急的に生活を支えるグッズをそろえておくと安心できます。

▢ 懐中電灯（できれば1人1つ）

▢ 予備の乾電池・モバイルバッテリー

▢ 携帯ラジオ（手回し・ソーラー式が便利）

▢ ライター・マッチ・ろうそく

▢ 携帯用カイロ・毛布・寝袋

▢ 軍手・作業用手袋

▢ 笛（救助を呼ぶため）

▢ ビニール袋（ごみ・簡易トイレ用）

▢ ラップフィルム・アルミホイル（食器代用や保温に役立つ）

▢ レジャーシート・ブルーシート

▢ ロープ・ガムテープ

▢ 携帯用ナイフやマルチツール

衛生用品

災害時には衛生環境が悪化しやすく、感染症や体調不良につながることもあります。日常的に使う衛生用品を多めに備えておくと、避難生活でも快適さを保ちやすいでしょう。

▢ トイレットペーパー

▢ ティッシュペーパー

▢ ウェットティッシュ（アルコールタイプもあると便利）

▢ マスク

▢ 携帯トイレ・簡易トイレ

▢ 生理用品

▢ おむつ（乳幼児や高齢者用）

▢ 石けん・ハンドソープ

▢ 歯ブラシ・歯磨き粉

▢ 消毒液・アルコールスプレー

▢ タオル・ハンカチ”

女性・子ども・乳幼児向けの用品

家庭によって必要な備蓄は異なります。特に女性、乳幼児、高齢者がいる場合は、それぞれに合わせた専用の用品を準備しておくことが欠かせません。

★女性向け

▢ 生理用品（ナプキン・タンポン・吸水ショーツなど）

▢ 授乳中の人向け：授乳ケープ

★乳幼児向け

▢ 哺乳瓶

▢ 粉ミルク・液体ミルク

▢ ベビーフード・離乳食

▢ おむつ（乳児用）

▢ おしりふき

▢ 母子手帳・保険証のコピー

▢ 抱っこひも・スリング

▢ 子ども用マスク

▢ 着替え・防寒具

★高齢者向け

▢ おむつ（高齢者用）

▢ 常用薬・服薬カレンダー

▢ 補聴器・眼鏡・入れ歯用品

▢ 介護用食（やわらか食・とろみ剤など）

▢ 防寒具・着替え

【企業】防災備蓄品リスト

企業では、災害発生時に従業員の安全を確保しつつ、事業を継続できる体制づくりが重要です。そのためには、家庭用とは異なり、オフィスや工場での集団生活や救助活動を想定した防災備蓄が求められます。ここでは、企業が備えておくべき代表的な防災用品を、カテゴリごとにまとめて紹介します。

救助道具

災害時には従業員の救助や避難経路の確保が必要になります。倒壊物を取り除いたり、負傷者を運搬したりするための救助道具は必ず用意しておきましょう。

▢ 担架（簡易式・布製など）

▢ バール・ジャッキ・スコップ

▢ 消火器

▢ 防塵マスク・ゴーグル

▢ ヘルメット・安全帽

▢ ホイッスル

安全用グッズ

避難時や停電時には、安全に行動するためのグッズが欠かせません。照明や通信手段、防煙対策を整えておくことで、従業員の不安を和らげることができます。

▢ 非常用ライト・ランタン

▢ 携帯ラジオ（手回し・ソーラー式）

▢ 予備電池・モバイルバッテリー

▢ 防煙フード

▢ 防災頭巾

▢ 軍手・作業用手袋

▢ 安全靴”

救急セット

けが人が出た場合に備え、応急処置を行える救急セットを整えておくことが重要です。軽傷でも放置すると悪化するため、初期対応できる体制を整える必要があります。

▢ 応急手当用品（包帯・ガーゼ・絆創膏）

▢ 三角巾

▢ 常備薬（解熱剤・胃腸薬など）

▢ 消毒液・綿棒

▢ 体温計

▢ 携帯用担架や救急シート

帰宅困難者への備え

大規模災害時は交通網が麻痺し、従業員が会社から帰宅できない可能性があります。企業には、従業員が最低3日間滞在できる環境を整えることが求められます。以下を目安に従業員数×必要量で準備しましょう。

★生活支援用品（3日分が基本）

▢ 飲料水：1人 3L/日 × 3日＝9L

▢ 主食・保存食：1人 3食/日 × 3日＝9食（アルファ米・缶詰・栄養補助食品／加熱不要品も）

▢ 簡易トイレ：1人 5回/日 × 3日＝15回分（凝固剤・便袋・トイレットペーパー）

▢ 毛布・寝袋・簡易マット：1人 1枚（セット）／アルミブランケットも有効

▢ プライバシー確保：簡易パーテーション・間仕切り

▢ 掲示・連絡用品：名簿、連絡用ホワイトボード、掲示板、マーカー

▢ 照明・情報：懐中電灯/ランタン（各フロア）・予備電池・携帯ラジオ（手回し/ソーラー）

▢ 衛生・生活：ウェットシート、手指消毒、使い捨て手袋、生理用品、紙皿・コップ・割箸・ラップ

▢ 給水・配布：給水袋/ポリタンク、台車

▢ 受け入れ備品（救援物資・来訪者対応）：ビニールシート、折りたたみテーブル・椅子、掲示用サイン

 従業員の滞在を前提とした備蓄は、東京都など自治体のガイドラインでも推奨されています

参考：東京都「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」

防災備蓄品を準備する際のコツ

防災備蓄は、そろえるだけでなく「保管」と「管理」も重要です。いざという時に確実に使える備えにするには、日常的な入れ替えや取り出しやすい収納、人数に応じた量の確保が欠かせません。ここでは、防災備蓄を長く活用するためのコツを紹介します。

ローリングストック法を取り入れる

防災備蓄でよくある失敗が、賞味期限切れによって使えなくなってしまうケースです。そこで有効なのが「ローリングストック法」です。これは、普段から食べている食品や日用品を少し多めに買い、消費したらその分を補充していく方法です。

この循環を続けることで、常に新しい状態を保ちながら備蓄を管理できます。特別な負担も少なく、いざという時に安心して使えるのが最大のメリットです。

取り出しやすい収納方法にする

防災備蓄品は、災害時にすぐ取り出せる場所に収納しておくことが重要です。玄関やリビングの近く、オフィスであれば出入口付近など、避難経路に近い場所が適しています。

重い飲料水や非常食は下段に、軽い小物類は棚や引き出しに整理し、ラベルで分類しておくと探しやすくなります。備蓄品を分散して配置すれば、オフィスでも全員に行き渡りやすくなります。定期的に点検と更新を行うことで、必要な時に確実に使える備えが整います。

企業は従業員数＋α分を備蓄する

企業の防災備蓄は、従業員の人数ぴったりではなく、少し多めに用意しておくことが大切です。災害時には、来客や取引先、偶然社内にいた人が被災する可能性もあるため、人数分を超える備蓄が必要になります。

目安としては「従業員数×3日分＋10％増し」で計算すると安心です。また、正社員だけでなく、パートや派遣社員などすべての従業員を含めて見積もることが欠かせません。不足のない備えを整えることで、災害時にも全員が安心して過ごせる体制をつくることができます。

防災の備蓄品リストを活用して日常から備えよう

防災備蓄は、いざという時に家族や従業員の命と生活を守る大切な備えです。水や食料だけでなく、生活用品や衛生用品、家族構成や職場環境に応じた特別な品も必要になります。さらに、ローリングストック法や分散配置などの工夫を取り入れることで、無理なく管理できます。今日から少しずつ準備を始めましょう。