南海トラフ地震で生き残る地域は?想定被害と危ない地域、自分でできる対策を解説
いつ起こってもおかしくないとされる南海トラフ地震。生き残る地域がどこなのか気になる方も多いのではないでしょうか。多くの地域で震度7や津波による甚大な被害が予想されるため、対策を十分に講じることが重要です。本記事では、南海トラフ地震の概要や想定される被害エリアを解説します。自分で日頃からできる備えについても確認しておきましょう。
南海トラフ地震とは?
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖までのプレート境界を震源域とし、100〜150年周期で発生する大規模な地震です。この地震は過去にも甚大な被害をもたらしており、被害を抑えるためにも、過去の教訓を学ぶ必要があります。まずは、南海トラフ地震の発生メカニズムや過去の事例について見ていきましょう。
そもそも南海トラフとは?
「南海トラフ」とは、駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀伊半島の南側、土佐湾、日向灘沖までの地域に広がるフィリピン海プレートと、ユーラシアプレートが接する境界に位置するトラフです。トラフとは、海底を走る長い幅広い溝のうち、最大水深が6,000メートルを超えないものを指します。
南海トラフ地震の発生メカニズム
南海トラフ沿いにあるプレート境界では、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に1年あたり数センチの速度で沈み込んでいます。この過程でユーラシアプレートが地下に引きずり込まれ、ひずみが蓄積されていきます。
やがてこのひずみが限界に達し、ユーラシアプレートが跳ね上がることで発生するのが、南海トラフ地震です。このメカニズムは繰り返されるため、南海トラフ地震は定期的に発生することが明らかになっています。
南海トラフ地震の過去の事例
過去に発生した南海トラフ地震の事例を見てみましょう。例えば、1707年に起きた宝永地震では、駿河湾から四国沖にかけて広い範囲で同時に地震が発生しました。
また、マグニチュード8クラスの大規模地震が隣接する領域で、時間をおいて発生しているケースもあります。1854年の安政東海地震では、32時間後に安政南海地震が発生。さらに、1944年の昭和東南海地震は、2年後に昭和南海地震を引き起こしました。これらの事例から、南海トラフ地震の発生には多様性があることがわかります。
1946年の昭和南海地震から、すでに70年以上が経過。南海トラフ地震は、100〜150年周期で起きていることから、次の地震発生の可能性が高まっています。マグニチュード8〜9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は70〜80パーセントとされています。
南海トラフ地震で想定される被害
政府は南海トラフで巨大地震が発生した際の被害を想定して発表しています。また、過去の地震から「半割れ」という特徴的な地震が発生する可能性も示唆されています。それぞれの内容について詳しく解説します。
南海トラフ巨大地震の被害想定の全体像
内閣府の「南海トラフ巨大地震編 被害想定の全体像編」によれば、南海トラフ地震が発生した際の被害は以下の通りです。
<被害想定の全体像>
被害内容 | 最大数または影響 |
死者数合計 | 最大32万3,000人(東日本大震災の17倍) |
全壊及び焼失棟数合計 | 最大238万6,000棟(東日本大震災の18倍) |
上水道 | 最大3,440万人が断水により使用不可能(給水車1,000台) |
下水道 | 最大3,210万人が利用困難 |
停電 | 最大2,710万軒 |
都市ガスの供給停止 | 最大180万戸 |
固定電話 | 最大930万回線が通信不能 |
携帯電話 | 大部分の通話が困難 |
道路(路面損傷・沈下・橋梁等) | 最大4万ヵ所 |
鉄道(路線変状・路盤陥没等) | 約1万9,000ヵ所 |
港湾(係留施設被害) | 約5,000ヵ所 |
港湾(防波堤被害) | 126~135キロメートル |
空港 | 中部国際空港・関西空港・高知・大分・宮崎空港:津波浸水 |
帰宅困難者 | 京阪都市圏:最大660万人・中京都市圏:最大400万人 |
避難者(発災1週間後) | 最大950万人 |
食料 | 最大3,200万食不足(発災後3日間合計) |
飲料水 | 最大4,800万リットル不足(発災後3日間合計) |
医療機能(入院) | 最大15万人が対応困難 |
医療機能(通院) | 最大14万人が対応困難 |
経済的被害 | 最大215兆円(資産等の被害約170兆円・経済活動影響約45兆円) |
南海トラフ地震の最悪の想定「半割れ」
南海トラフ地震の最悪のケースとして「半割れ」が挙げられます。半割れとは、東側と西側の震源域が時間を空けてずれ動く地震です。1回目の地震が発生した後に、まだ動いていない領域で再び大きな地震が起こることがあります。このような連続地震は地域の救援活動を妨げ、さらに被害を拡大させる可能性があります。
実際、1854年の安政東海地震と安政南海地震、1940年の昭和東海地震と昭和南海地震では「半割れ」が発生し、大きな被害が出ました。2度の巨大地震が発生することで、救助活動が遅れ、復旧が困難を極めたためです。この「半割れ」が発生すると、経済的損失が100兆円を超える可能性もあり、国や専門家が強い警戒を呼びかけています。
南海トラフ地震で生き残る地域はどこ?地震・津波の想定被害エリア
次に、実際にどのエリアでどのくらいの地震や津波が起こると想定されているのか解説します。この想定被害エリアを見て、生き残れる地域を推定できるでしょう。
予想されている震度・津波と被害エリア
出典:気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
政府の中央防災会議は、南海トラフ地震が発生した際の被害想定を発表しました。南海トラフ巨大地震が発生した場合、静岡県から宮崎県にかけての一部地域で、震度7の強い揺れが発生する可能性があります。また、周辺地域でも震度6強から6弱の揺れが予想されています。
被害が予想されているのは、南海トラフの地域だけではありません。内陸や遠く離れた地域でも震度4から5の揺れが見込まれ、広範囲にわたって甚大な被害が及ぶことが懸念されています。
出典:気象庁「南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」
また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸には、10メートルを超える津波が襲来することが想定されています。
南海トラフ地震の防災対策推進地域・津波対策特別強化地域
★内閣府の画像「地震防災対策推進地域・地震津波避難対策特別強化地域」を使用予定★
政府は甚大な被害が予想されるエリアを「南海トラフ地震防災対策推進地域」「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定しています。
<南海トラフ地震防災対策推進地域>
出典:内閣府「南海トラフ地震防災対策推進地域の指定」
1都2府26県707市町村が指定されており、震度6弱以上の地域、津波高3メートル以上で海岸堤防が低い地域が含まれます。防災体制の確保、過去の被災履歴への配慮が求められます。
<南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域>
出典:内閣府「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域の指定」
1都13県139市町村が指定されており、津波による浸水が地震発生から30分以内に発生する可能性が高い地域です。津波避難所や避難ルートの整備、避難訓練が義務付けられています。
国はこれらのエリアの地方公共団体や関係事業者に地震防災対策を推進しています。
南海トラフ地震で生き残るためにできること
過去に起きた地震の教訓を踏まえて、今後起こるとされている南海トラフ地震への備えで、自分たちができることを確認しておきましょう。
自宅の耐震化対策をする
南海トラフ地震のような大地震から命を守るためには、自宅の耐震化対策が必要です。昭和56年(1981年)以前の建物は「旧耐震基準」で建てられ、耐震性が不十分なものが少なくありません。
耐震診断をしてもらい、自宅の建物の耐震性を把握することが重要です。耐震性が不十分であった場合は、耐震改修や建替えなどを検討しましょう。費用がかかるため、国と地方公共団体の支援制度を活用するのも良いでしょう。
居住地域の津波のリスクを確認する
ハザードマップを利用して居住地域で津波が発生する可能性を確認しておくことで、災害時に慌てずに対応できます。特に、避難対策特別強化地域に指定されている場合は、自宅が浸水する危険があります。たとえ30センチの津波であっても、命に関わることがあるため、十分に注意しましょう。
家具の固定・配置の工夫をする
震度7の地震では、大型家具も倒れる可能性があるため、家具を壁に固定することをおすすめします。また、寝室や子供部屋には大型家具を置かないようにし、家具が倒れない場所を確保するために配置を工夫しましょう。
避難場所を確認しておく
津波や地震による自宅の倒壊が想定される場合に備えて、避難場所の確認も重要です。家族と一緒にハザードマップや避難通路を確認し、安否確認方法も共有しておきましょう。
食料や日用品を備蓄する
電気・水道・ガスなどのライフラインが止まった時に備え、事前に備蓄品を確認しておきましょう。南海トラフのような大災害では、1週間分の備蓄が推奨されています。
食料、飲料水、日用品、簡易トイレなどの防災用備蓄品リストをチェックして準備しておくと安心です。また、ガソリンなどの車の燃料は常に満タンを心がけておくと、車が一時的な避難場所として役立ちます。冬場は灯油を1缶備えておくと、石油ストーブなどで暖を取る際に便利です。
備蓄品のリストは、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
▼こちらも参考に。
南海トラフ地震で生き残るために地域のリスクを把握しよう
広範囲にわたり甚大な被害が予想される南海トラフ地震。生き延びるためには、地域のリスクを把握し、十分な備えをしておくことが重要です。災害時に冷静に対応できるよう、自宅の耐震対策やハザードマップの確認、避難経路の確保など、今からできる対策を講じておきましょう。
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