災害関連死を防ぐには?避難所生活や日常でできる対策を解説
災害関連死は、避難生活や精神的ストレス、持病の悪化などによる間接的な死を指し、過去の大規模地震でも多数報告されています。日常での防災備蓄や自治体による避難所環境の整備が、災害関連死を防ぐための重要な対策です。この記事では、災害関連死の原因や事例を紹介。個人や家庭、自治体が取るべき具体的な対策も解説します。
災害関連死とは
災害関連死は、災害によって直接命を落とすわけではなく、避難生活や精神的ショックなど間接的な要因で命を失うことを指します。
内閣府は、災害関連死を「当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの」と定義しています。
しかし、自治体によって認定基準が異なるため、申請されていない事例も少なくありません。実際の死亡者数は公表されているデータより多いとされています。
災害関連死には、肺炎や心筋梗塞、持病の悪化、精神疾患などが含まれます。地震による直接死よりも、災害関連死の方が多く発生することがあり、これは復興支援や政策において重要な課題とされています。
過去の災害から見る災害関連死の実態
過去の大規模地震における災害関連死は以下の通りです。
発生した年 | 地震名 | 災害関連死者数 | 全体の死者数 |
1995年 | 阪神淡路大震災 | 912人 | 6,432人 |
2004年 | 新潟県中越地震 | 52人 | 68人 |
2011年 | 東日本大震災 | 3,802人 | 死者15,900人、行方不明者2,520人 |
2016年 | 熊本地震 | 218人 | 274人 |
2024年 | 能登半島地震 | 112人 | 341人 |
災害関連死が注目されるようになったのは、新潟県中越地震において全体死者数の74%を占めたことがきっかけです。東日本大震災では、発災後1週間以内に亡くなった人が全体の18%を占めました。
さらに、熊本地震では関連死の約8割が発災後3か月以内に発生し、厳しい避難生活やその後のストレスが大きく影響したとみられています。特に高齢者に災害関連死が多く見られることも特徴です。
熊本地震について↓↓(10月8日投稿コラム)
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災害関連死の原因と事例
災害時には肺炎などの呼吸器系の疾患や、心不全、心筋梗塞などの循環器系疾患で死に至るケースが見られます。また精神的なショックや疲労も関係しています。災害関連死の原因と事例を見ていきましょう。
参考:復興庁「東日本大震災における震災関連死に関する報告(平成24年8月21日付)」
内閣府:「災害関連死について」
原因と事例① 避難所の環境やストレス
避難所生活での過度なストレスが災害関連死の主な要因となります。
<事例>
- 83歳の女性が慣れない避難所生活によって肺炎を患い、最終的に入院先で死亡
復興庁の調査によると、東日本大震災での災害関連死の約3割が「避難所等における肉体・精神的疲労」に起因し、2割が「避難所等への移動中の疲労」に関連しています。特に福島県では、避難所生活に関連するストレスから死に至るケースが多く見られました。
避難所での集団生活では、インフルエンザやノロウィルスなどの感染症にかかり、風邪をこじらせて肺炎を引き起こすケースも起きています。
避難所での生活が健康に深刻な影響を及ぼし、災害関連死につながることがわかります。
原因と事例② 持病の悪化
東日本大震災では、薬を飲んでいた人や要介護認定を受けていた人など、既往症があった人の関連死が6割にも上りました。
<事例>
- 88歳男性:地震による栄養障害や持病の悪化等により死亡
災害発生後の混乱により、停電や断水、人員不足など病院の機能が停止し治療の遅れを招くことがあります。さらに避難生活中に水分補給の不十分さ、栄養不足や睡眠不足が続くと、高齢者や持病を持つ人の健康に深刻な影響を与えます。
原因と事例③ エコノミークラス症候群
2004年の新潟県中越地震では、車中泊をしていた4名がエコノミークラス症候群で亡くなっています。エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢でいることで足や下半身に血栓ができ、急な動作で呼吸困難や意識喪失を引き起こす病気です。
<事例>
- 74歳女性:避難中の車内で疲労による心疾患で死亡
- 43歳女性:エコノミークラス症候群の疑いで死亡
事例にあるように、エコノミークラス症候群は、若者にも発症することがあります。足に血栓ができていても自覚症状がないため、長時間同じ姿勢を避けることが重要です。車中泊や避難所での生活は、血栓形成のリスクを高めるため、こまめに体を動かし、適切な対策を講じる必要があります。
原因と事例④ 地震後の恐怖・疲労
大きな地震災害では、地震のショックや恐怖、その後の精神的や肉体的な疲労により死に至るケースも見られます。
<事例>
- 78歳男性:地震後の過度な疲労により心不全を引き起こし死亡
- 83歳女性:地震のショック及び余震への恐怖が原因で、急性心筋梗塞により死亡と推定
- 32歳男性:地震による疲労が原因と思われる交通事故による死亡
- 仮設住宅から復興住宅へ移る際に、先の見えない将来を悲観して自殺
精神的疲労が原因の死も少なくないため、災害時は心のケアも重要です。
災害関連死を防ぐには|日常でできる対策
災害関連死を防ぐには、日常からの備えや避難生活中の対策を徹底することが重要です。個人・家庭でできる備えや避難所での対策を紹介します。
【日常】防災用品を備えておく
災害関連死を防ぐためには、個人や家庭で以下のものを備えておきましょう。
<災害関連死を防ぐために備えておくべきもの>
- 防災テントや非常用の簡易トイレ:避難所の混雑や不衛生な環境を避けるため
- 防災グッズ:備蓄品や非常食、薬、ペット用品などを最低3日分から余裕をもって1週間分を用意
- ガソリン満タン・灯油プラス1缶:一時的な車内での避難でパーソナルスペースを確保、灯油は冬季に灯油ストーブに使用
- 地震保険に加入:災害後の生活再建に備えて、補償内容を確認しておく
これらの準備をすることで、万が一の災害時にも安心して対応できます。
【防災グッズ】本当に必要なもの7選|災害に備えて家庭で行うべき対策も
【避難所】軽い運動をする
エコノミークラス症候群を防ぐために、災害時には身体を少しでも動かし、血流を促すことが重要です。可能な範囲で散歩やストレッチを行い、座ったままの運動やマッサージも取り入れましょう。車中泊の場合は、衣服をゆるめに着用し、1時間ごとに車外でストレッチをすることがすすめられています。
これらの対策を実践することで、血行を促進し健康を維持するのに役立ちます。
【避難所】こまめに水分補給をする
避難所生活や災害時には、こまめな水分補給が大切です。水分が不足すると血液が濃くなり、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。適切な水分補給は、脱水症状による脳梗塞や心筋梗塞の予防にもつながります。備蓄品には、1人あたり3日分(9L)または1週間分(21L)の水を用意しておくことを忘れずに準備しておきましょう。
災害関連死を防ぐには|自治体ができる対策
自治体には、避難所生活の環境を整え、医療体制を充実させることが求められます。ここでは、災害関連死を防ぐために自治体が取り組むべき対策を紹介します。
TKB対策で避難生活の環境を整える
「TKB (トイレ・キッチン・ベッド)」は、関連死を防ぐために避難所や仮設住宅に求められる対策です。劣悪な避難所環境が原因で、健康を害するケースがあるため、医師や専門家による学会では以下のような改善が提言されています。
- トイレ:トイレの数を増やし、常に清潔を保つ
- キッチン:栄養バランスの取れた温かい食事を提供し、冷たい食事を避ける
- ベッド:段ボール製の簡易ベッドを設置し、床での雑魚寝を避け、プライバシーと快適さを確保
これにより、避難者の負担が軽減され、健康リスクの低減が期待されます。
医療・介護体制を充実させる
医療や介護体制の整備も災害関連死を防ぐために不可欠。継続的な服薬や定期診療ができる環境の整備や、ケアが必要な人を事前に把握することが重要です。
また、精神的なストレスによる健康悪化も多いため、心のケアに対応できるサポート体制も必要とされます。さらに、緊急時には自治体だけでは対応が難しい場合もあるため、他県の医療機関や民間団体との連携が求められます。
災害関連死への補償と支援制度
被災者の生活再建への取り組みを支援するために、国によるさまざまな支援制度が設けられています。
<例>
- 災害弔慰金
- 災害障害見舞金
- 被災者生活再建支援制度
その他、内閣府の「被災者制度に関する各種制度の概要」を参考にしてください。災害関連死により困難に陥った場合は、これらの制度を活用し再建へと取り組むと良いでしょう。
災害関連死を防ぐには避難所での対策と日常の備えが重要
災害関連死は、避難生活での環境変化や精神的ストレス、持病の悪化などが原因で起こることが多いため、日常の備えと自治体の対策が非常に重要です。まずは個人でできる準備を整え、自治体の対応も把握しながら、災害関連死のリスクを最小限に抑える対策を講じましょう。
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