2024/09/06
乳児を連れた避難、どうすれば良い?【避難所・在宅避難・車中避難】
災害発生時、乳児を連れた避難は想像以上に大変なものです。赤ちゃんの安全を確保しながら行動できるよう、ここでは避難する際の注意点や、必需品リスト、また在宅避難・車中避難のメリットや注意点、過去に被災したママ・パパの声を紹介します。万が一のために、備えを万全にしましょう。
乳児を連れた避難の注意点
赤ちゃんを抱っこして、食事や授乳用品などをたくさん持って…と、通常の避難以上に大変な乳児避難。避難行動と授乳、食事についての具体的な注意点を解説します。
避難行動の注意点
赤ちゃんを連れて行動するため、通常よりも避難に時間がかかります。道路の混雑や交通規制によってはベビーカーが使えない場合もあるため、抱っこひもが必要です。避難行動を始めるタイミングは「高齢者等避難」の発令です。「高齢者等」には、子どもや障害を持つ人、妊婦など避難に支援が必要な人も含まれます。地域の避難所以外にも、実家や親せき、友人宅への避難を検討しましょう。
食事や授乳の注意点
避難先では食事が制限されることが多く、通常の生活が難しくなります。非常用の食事は塩分が高い傾向にあり、選べる状況であれば塩分が少ないものを選びましょう。また十分な栄養が取れず、口内炎ができやすくなることもあります。
災害時にはストレスで母乳が出にくくなることがありますが、ミルクを併用しながら授乳を続けることが大切です。離乳食が足りない場合は、母乳や粉ミルクで栄養をまかないましょう。
避難する時の持ちもの・注意点
お出かけ用のマザーズバッグに、必需品を準備しましょう。哺乳瓶や食器を消毒できない場合の対策も解説します。
避難に持って行く必需品リスト
□ ミルク、哺乳瓶、紙コップ:哺乳瓶が洗えない場合は紙コップを使ってミルクを与えます。
□ 保温水筒に入れた調乳用のお湯:ミルクを作るには70度以上のお湯が必要です。
□ おむつ、ポリ袋、おしりふき:おしりふきは入浴できない時に体を拭くのにも使えます。
□ ガーゼ:歯の汚れを落とす、顔を拭くなど多用途に使えます。
□ 授乳用ケープ(大きめのバスタオル):プライバシーを守りながら授乳できます。
□ 肌着、着替えの服、靴:必要に応じて着替えさせましょう。
□ 離乳食:1~2日分を用意します。
□ 食事用のスプーンやフォーク:洗えない場合を考え、使い捨てタイプも含めて準備しましょう。
□ 母子手帳、健康保険証:日頃から取り出しやすい場所に置いておきましょう。
□ お気に入りのおもちゃや絵本:心のケアに役立ちます。
□ 紙コップ、紙皿:哺乳瓶、食器が洗えない場合に備えて準備します。
哺乳瓶や食器を消毒できない時の対策
哺乳瓶の消毒ができない場合は、使い捨ての紙コップを使って授乳します。
<手順>
1. 赤ちゃんを縦に抱きかかえて背中と首を支えます。
2. 小さめの紙コップに入れたミルクを赤ちゃんの下唇にそっと当てます。
3. 舐めさせるようにして、ゆっくり飲ませます。
飲ませるにはコツがいるので、一度練習しておくのがおすすめです。飲み残したミルクは菌が増えるので、必ず捨てましょう。避難の長期化や、食器を洗えない場合を想定して、使い捨ての食器を多めに準備しておくと安心です。
乳児との避難生活【避難所】
被災後は、自宅での生活が可能なら自宅で、そうでなければ実家や親せきの家、友人宅、ホテル、それ以外は避難所で生活することになります。乳児を連れた避難所での生活はどのようなものか確認しておきましょう。
避難所での注意点
多くの人が1ヵ所に集まるため、授乳やおむつ替えのスペースが十分ではなく、乳児と生活するための環境・設備面の充実はあまり期待できないのが実情です。また離乳食の配給や、乳児を保護するための衛生面の対策は後回しになりがちです。1日程度を過ごす避難なら、必要最低限のものを持って行けば対処できますが、長期避難を考えるなら、避難所以外の選択肢も検討してみてください。
乳児を連れて避難所で過ごした人の声
過去に避難を経験した人の体験談から、避難所での乳児との生活に関する具体的な課題や対策を紹介します。
・ 離乳食の配給がなかなか来ず、大変だった
・携帯用のミルクとポットにお湯を入れて、常に用意しておくと緊急時にも対応できた。しかし、水がないと哺乳瓶を洗えなかった
・ショックで母乳が出なくなり、ミルクやおむつもギリギリの量でハラハラした。
・ 停電した真っ暗闇の中で授乳するのは怖かった
・ 授乳スペースがなく、夜中に人の迷惑にならないように哺乳瓶もよく洗えず、一晩で何回もミルクをやるのが大変だった
乳児との避難生活【在宅避難】
避難所に比べると、通常時に近い生活が送れる自宅での避難。しかしライフラインがストップするなど、不便を感じる場面も多く想定されます。日頃から備えを十分にし、なるべく通常と同じ生活を送れるよう対策しましょう。
在宅避難の注意点
安全を確保した上で自宅で過ごすことを在宅避難といいます。都市部ではすべての住民を収容できる規模の避難所がないケースも多く、自治体としても自宅の安全が確保されている場合は在宅避難を推奨しています。
特に乳児がいる家庭では、可能な状況であれば避難所よりも自宅での避難を検討するのがおすすめです。飲料水や生活用水、ミルクや離乳食、おむつは多めにストックしておきましょう。どんな状況でもお湯を沸かしてミルクが作れるよう、カセットコンロや灯油で使える石油コンロを準備しておくのもおすすめです。
乳児を連れて自宅避難した人の声
実際に自宅避難を経験した人の体験談を紹介します。
・ 停電で電気ポットが使えなくなり、ミルクを作るのが大変だった
・ガスが使えず、お湯を沸かすのが難しかった
・自宅に離乳食やおむつを十分に備蓄していなかったため、子どもを抱っこして5時間配給に並んだ
乳児を連れた一次避難には車もおすすめ
災害の危険を回避できるための一時的な避難(一次避難)場所として、車も使えます。「余震が怖いので安全な場所で一晩過ごしたい」「停電で冷暖房が使えない」といった状況下での避難に検討しても良いでしょう。
車中避難のメリット
避難所に比べてある程度プライバシーが保たれる車は、乳児を連れての避難に適しています。授乳がしやすく、夜中にぐずっても気兼ねしなくて済みます。また、施錠できるため防犯面でも安心です。エアコンで冷暖房が使え、スマートフォンの充電も可能な点もメリットです。
車中避難の注意点
車中避難にはメリットがたくさんありますが、注意点もあります。赤ちゃんをケガから守るため、以下の点に注意しましょう。
チャイルドシートは赤ちゃんの安全を守るものですが、長時間の使用には適しません。赤ちゃんを後部座席に乗せ、体をぶつけないよう周りをクッションやバスタオルでガードします。座席から落ちないように目を配り、窓やドアのチャイルドロックもかけておきます。
また長い間座ったままだと血行不良が起き、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。赤ちゃんだけではなく自分自身も十分な水分補給を意識し、たまに車の外に出て体操をしたり、足のマッサージをしたりといった対策が必要です。なお寝る時は座席をフラットにして、なるべく手足を伸ばせるようにしてください。
もしもの時のために、車にも備えを
車を一時的な避難場所として使えるよう、また遠方の実家などへも避難ができるよう、日頃から十分な燃料を補充しておきましょう。防災グッズを車に備えておくことも大切です。
燃料満タンを習慣に
燃料が十分にないと、車内で快適に過ごせません。災害発生時はガソリンスタンドに長蛇の列ができることも珍しくないため、車の燃料メーターが半分程度になったら満タンにすることを心がけましょう。
防災グッズを載せておく
もしもの時に備えて、車に防災グッズを載せておくのがおすすめです。夏場は車内がかなりの高温になるため、車載可能なものを選びましょう。
□ 車載可能な飲料水、保存食
夏場、高温になった車内に置いても大丈夫な耐温度域が広い車載可能なものを選びます。また赤ちゃんのミルク用に使う水はミネラル0の軟水を。スーパーなどでは見つからないことがあるので、「車載可能 水/非常食」などのワードでネットショップなどで検索してみてください。
□ 防寒具
薄くてかさばらないアルミの防寒シートを家族の人数分積んでおくのがおすすめです。カイロも一緒に積んでおくとより安心でしょう。
□ おむつグッズ・衛生用品
マザーズバッグに入れているだけでは足りなくなる可能性があるため、予備のおむつを車に積んでおきます。使い終わったおむつを入れる防臭効果のあるビニール袋、除菌シートや、予備のおしりふきも必要です。数日間生活できるくらいの着替えを何枚か入れておけば、防寒にも使えます。
乳児避難用の防災グッズを準備し、「満タン運動」を実践しよう
避難所に連れて行って夜泣きをしたら大変、授乳はきちんとできるだろうかなど、乳児を連れた避難には不安がつきものです。日頃から必要なグッズを備えておくことで、避難所や在宅避難、車中避難など、さまざまな状況に対応することができます。避難先や避難方法に合わせて適切な準備を行い、いざという時に備えましょう。車中避難を検討している場合は、できるだけ快適に過ごせるよう、燃料メーターが半分程度になったら満タンにして備えておいてくださいね。
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