車中泊避難とは?災害時に安全に過ごすための備え・ポイント・注意点を解説
災害発生時の避難方法には、車中泊避難という選択肢もあります。プライバシーを守りやすいといったメリットがある一方で健康上のリスクが大きいため、長期ではなく一時的な避難方法のひとつとして考えておくようにしましょう。車中泊避難のメリットやデメリット、備えておくことやポイントなどを紹介します。
車中泊避難は一時避難に適した手段
自然災害時、自宅が危険な状況にある場合に安全な場所に車を停めて車内で過ごす避難手段が「車中泊避難」です。車中泊避難のメリットとして、プライバシーが確保しやすいことや、避難所での集団生活が難しい小さい子供やペットがいる場合でも避難しやすいことが挙げられます。また、車内装備が利用できるため、ある程度の快適さも確保できるでしょう。
ただし、車中泊避難は健康上のリスクが高いため、原則は避難所への避難が推奨されています。やむを得ず車中を避難所にする場合は、一時的な利用にとどめて長時間使用しないようにし、健康リスクを避ける対処法を行う必要があります。
原則として徒歩避難が推奨されているのは健康上の問題ではなく、道路損壊で危険が及ぶ可能性があるのに加え、渋滞の発生によって警察や自衛隊などの優先車両の通行を妨げる可能性を避けるためです。
車中泊避難の健康リスクが高い理由
車中泊避難がやむを得ない場合に限られる大きな理由は、健康上のリスクが高い点にあります。特に注意しなければならないのは、エコノミークラス症候群の発生リスクが大きいことです。車中泊避難は狭い車内で同じ姿勢を長時間続けてしまいやすく、その結果血行不良が起こり、エコノミークラス症候群が発生するおそれがあります。車内のスペースは限られるため、避難人数は車の定員人数よりも少なく見積もらなければなりません。また、エコノミークラス症候群だけではなく、熱中症や一酸化炭素中毒などのリスクもあります。
車中泊避難のために備えておくこと
車中泊避難を選択肢に加える場合、必要なものや車のメンテナンスなどの備えは欠かせません。車中泊避難のための備えについて紹介します。
必要な避難用品を用意しておく
車中泊避難がいつでもできるように、食料や水、防寒具、毛布、懐中電灯、医薬品、携帯トイレなどの基本的な避難用品を備えておきましょう。食料や水といった高温で劣化するおそれのあるものは、自宅から車にすばやく持ち出せるようにしておくのがポイントです。衣類やタオル、寝具は圧縮袋を活用すると保管しやすくなります。さらに、ポータブル電源や車内用エアマット、ソーラーパネル、寝具やクッション、窓の目隠しなどの便利なアイテムも用意しておくと、避難生活がより快適になります。ペットがいる場合は、ペット用の食事やトイレ用品も忘れずに用意しておきましょう。
防災グッズの準備については、以下の記事を参考にしてみてください。
【防災グッズ】本当に必要なもの7選|災害に備えて家庭で行うべき対策も」
車のメンテナンスを定期的に行う
いつでも安全に車中泊避難ができるように、車のメンテナンスは怠らないようにしましょう。タイヤやバッテリーの点検は定期的に行い、ガソリンは常に満タンにしておくのがおすすめです。ガソリンが不足していると、エアコンや充電などの車内装備が活用できなくなります。災害時にはガソリンスタンドが閉まっていたり、混雑したりする可能性があるため、日ごろから満タンを心がけておくと緊急時も安心です。
安全に車中泊避難をするポイント
安全に車中泊避難を行うには、エコノミークラス症候群の予防やスペースの確保が必要です。車中泊避難の際、快適に過ごすためのポイントを紹介します。
十分なスペースを確保する
車内の配置を工夫し、荷物置き場や家族が過ごせるスペースを適切に確保しましょう。例えば、荷物はトランクにまとめておき、後部座席をフラットにして寝床を作るといった方法が有効です。また、シートの足元スペースにもダンボールや蓋付きの収納ケースなどが置けるので、活用してみるのもおすすめです。また、許可されているスペースであれば、テントを併用して対策するのもひとつの方法です。
プライバシーを守るための工夫をする
窓に目隠しをしておくとプライバシーを確保しやすくなります。車用のサンシェードやカーテンの他、タオルや新聞紙、ダンボールなどを活用するのも良いでしょう。ただし、運転時には安全のために取り外す必要があるので、着脱しやすくしておく必要があります。
エコノミークラス症候群の予防をする
狭い車内で同じ姿勢を長時間続けると、エコノミークラス症候群のリスクが上がります。エコノミークラス症候群とは、長時間同じ姿勢でいることで血行不良が起こり、血栓が生じて激しい痛みや呼吸困難、動悸などの症状が現れる疾患です。最悪の場合、死に至ることもあります。車中泊避難の際は以下の対策を行い、エコノミークラス症候群を予防しましょう。
- 寝床はなるべくフラットにする
- 足を下ろしたままで長時間過ごさず、車外に出て動く
- こまめに水分補給を行う
- ふくらはぎのマッサージやストレッチ、体操などで適度に体を動かす
- 弾性ストッキング(着圧ソックス)を活用する
暴風雨などで車外に出られない場合でも、脚の屈伸運動や上下運動などでこまめに体を動かすようにしましょう。
こまめに情報収集をする
自主的な車中泊避難では支援情報が迅速に届かない場合があるため、自ら情報収集を行う必要があります。ラジオやテレビ、インターネットの他、避難所でも情報収集を行い、孤立しないように注意しましょう。また、車中泊避難を選択する前に、自治体の車中泊避難に対するガイドラインや、車中泊に適した避難先が確保できるかを確認しておくことも重要です。
車中泊避難時の注意点
車中泊避難はあくまでもやむを得ない場合の選択肢のひとつです。また、車中泊避難を選択した場合はマナーを守ることも忘れてはいけません。車中泊避難時の注意点も確認しておきましょう。
避難自体は原則徒歩で行う
車中泊避難は選択肢のひとつではありますが、推奨されているわけではありません。例えば、地震発生時は幹線道路が閉鎖される場合もあるため、徒歩避難が原則となります。台風や水害時には、移動時に洪水に見舞われたり、渋滞で避難が遅れたりする可能性があります。車中泊避難は基本的に徒歩での移動が難しい場合など、やむを得ない状況にある時の選択肢と考えましょう。
エアコンは定期的に休ませる
長時間エアコンをつけたままにしていると、ガソリンを消耗しバッテリーが上がるリスクがあります。また、積雪時には排気口が雪で塞がれることで、一酸化炭素中毒の危険も生じます。低体温症や熱中症を予防するためにエアコンは必要ですが、頼りすぎないように注意が必要です。冬は使い捨てカイロや衣類の重ね着、夏は換気や水分補給を活用して対策を行いましょう。
エチケットやマナーを守る
避難時であってもエチケットやマナーは守り、周囲とのトラブルを避ける必要があります。騒音を出さないように気を付け、ゴミは持ち帰れるように管理しておきます。また、車中泊が可能な場所であるかの確認も忘れずに行いましょう。
車中泊避難を災害時の選択肢のひとつに加えよう
車中泊避難はプライバシーを確保しやすいため、小さい子どもやペットがいる家庭でも取り入れやすい避難方法です。ただし健康上のリスクが高いため、長期的な避難所としてではなく、一時的な避難所として考えるようにしましょう。ここで紹介したポイントや注意点をメモしておき、災害発生時の選択肢として車中泊避難の備えを行ってみてはいかがでしょうか。
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