【東日本大震災】ガソリン不足はなぜ起きた?震災から学ぶ教訓とは
東日本大震災では、石油供給網が大きな打撃を受け深刻なガソリン不足が発生。被災地ではガソリン供給が困難となり、避難車両がサービスステーション(SS)に殺到するなど、混乱が起きました。なぜ東日本大震災ではガソリン不足が起きたのか、その原因を解説します。教訓を活かした国の取り組みや自分にできることも参考にしてみてください。
【東日本大震災】ガソリン不足が起きた原因
東日本大震災は、日本全体に甚大な被害をもたらしました。その中でも深刻だったのが、ガソリンをはじめとする燃料不足です。震災の影響で、製油所やサービスステーション(SS)の多くが被災し、ガソリンの供給が大きく滞りました。その原因を詳しく見ていきましょう。
製油所や出荷施設の甚大な損傷
震災発生直後、仙台の製油所では出荷設備から火の手が上がり、千葉製油所でも大規模な火災が発生。消火活動が行われましたが、鎮火までには地震発生から10日もかかったといわれています。
その他、塩釜油槽所(しおがまゆそうじょ)を始めとする太平洋側の石油基地が操業停止に追い込まれ、在庫を出荷できない状況が続きました。東北・関東の6つの製油所が操業停止となり、東北地方の約4割ものSSが営業できない状態に。震災発生から1週間後には3つの製油所が再開しましたが、損壊した製油所の再開には数か月から1年もの時間が必要でした。
輸送網の障害と配送能力の低下
港湾や鉄道、道路などのインフラも大きく破壊され、瓦礫や漂流物でアクセスが寸断されました。輸送を行うタンクローリーも津波で流され、東北全体で700台あったタンクローリーのうち150台が被害を受けました。これにより、石油を必要な場所に届ける配送能力が大幅に低下。通行可能な道路では被災地から逃げる車で大渋滞が発生し、燃料の配送に大幅な遅れが生じました。
サービスステーション(SS)の被災
被災地では、多くのサービスステーション(SS)が倒壊や損傷を受け、ガソリンを購入できない状態になりました。震災直後には約4割のSSが営業できず、営業しているSSも停電により営業時間を短縮。
さらに東北地方では自動車が重要な交通手段であることが大きく影響し、避難しようと車両がSSへ殺到し、長蛇の列ができたということです。
また首都圏のSSにも波及し、ガソリン不足や価格の高騰を予測した人々により行列が発生。混乱を避けるため、ガソリンが十分にあるとの呼びかけや、SNSでの情報共有が行われました。
【東日本大震災】石油供給網の復旧
震災の1週間後には、さまざまな取り組みによりガソリン・軽油等の供給確保が行われました。具体的な取り組みと当時の状況を見ていきましょう。
他地域からの輸送
被害を免れた製油所で石油製品を増産し、新潟や秋田、山形など日本海側の油槽所で集めて被災地へ輸送しました。しかし、タンクローリーでは運べる量に限りがあるため、通常の3倍以上の時間がかかります。
また被害のない西日本からも多数のタンクローリーでの輸送が行われました。長距離であることや道路環境の悪さ、法改正による運行時間の制限などの良いとは言えない状況のなかで、できる限りの支援が行われます。
このようにさまざまな制約・制限があるなか、燃料不足の解消のため他の地域からの輸送を試みました。
油槽所の再稼働
3月17日には塩釜油槽所の機能が回復し再稼働したことで、タンカーによる運送が可能に。それと同時に拠点SSの整備も行われます。また事業者間で回復した塩釜油槽所を共同利用することにより、宮城県内のSSへの出荷開始が可能となります。八戸油槽所も早期に再稼働し、SSへの供給ができるようになりました。
関東圏・西日本での増産と取り崩し
関東圏の製油所では製品在庫の取り崩しが行われ、事業者間で連携して円滑な供給体制がとられました。西日本の製油所でも、関東圏の安定供給のために製品在庫を取り崩し、関東へ転送。さらに、西日本では輸出と需要を抑制し、稼働率をアップして追加分を東北地方へ送る体制が敷かれました。
臨時のSSを展開
SSがない空白地域に臨時のSSが展開され、3月末には震災前と同じか、それ以上の供給力が回復します。しかし、津波が直撃した地域ではSS自体が流されたり、倒壊したりして、空白地域が生じました。
そこでSSが近隣に存在しない地域にはドラム缶を用いた臨時SSをオープン。震災直後、世界的に石油価格が高騰しましたが、被災地でのガソリン販売価格は据え置かれました。
首都直下型・南海トラフ地震が起きたらガソリン供給はどうなる?
将来、首都直下型地震や南海トラフ地震が起きた場合、ガソリン供給にはどのような影響があるのかを考えてみましょう。
製油所・油槽所の被害が長期化
日本の製油所は、太平洋ベルト地帯に集中しています。資源エネルギー庁によると、もし首都直下型地震や南海トラフ地震など震度6以上の地震が起きた場合、製油所・油槽所に関して、次のような状況が起こる可能性があるとしています。
- 石油精製設備が停止した後、仮に設備に損傷がなくても運転再開までは7日前後かかり、また損傷が大きければさらに長期化する可能性
- 停電により、復旧に時間がかかる可能性
- 地盤の液状化が発生し、海上・陸上の入出荷ができなくなる可能性
引用:資源エネルギー庁より
製油所の被災は、油槽機能まで損なうことを意味します。大規模な地盤の液状化が発生すると、タンカーを製油所へ着けることも困難です。配管類の破損や石油タンクの傾きが起きれば、広範囲・長期間にわたる石油製品の供給障害につながります
主要道路の閉塞でガソリンが輸送できない
被災や液状化による沈下、倒壊建物の瓦礫により主要道路では通行できない区間が大量に発生し、ガソリンなどの輸送が困難になることが予想されます。渋滞も重なり、復旧には1週間から1ヵ月ほど要するでしょう。普通自動車は通れてもタンクローリーなどの大型車が通れるようになるまで、さらに時間がかかることも想定しなければなりません。
製油所・SSの不足で給油が困難に
現在全国的に製油所の数が減少しています。また、SSの数も需要不足や後継者不足でここ10年で大幅に減少。そのため、大きな災害時にはSS不足でガソリンの給油が困難になる可能性があります。
災害時に強い石油供給網をつくる国の取り組み
東日本大震災の教訓を活かして、災害時にスムーズに石油供給ができるよう、国として以下のような取り組みが行われています。
- 製油所や化学工場など26事業所の耐震性の確認・設備の安全停止対策・増強対策
- 瓦礫の除去などをして輸送網を早期回復させることをルール化
- 停電時にも供給ができる自家発電を備えた住民拠点SSを全国各地に約15,000箇所設置
- 災害拠点病院などの重要施設に燃料の備蓄を促進
災害時に備えて個人ができること
東日本大震災のような大規模な地震が起きると、ガソリンを求めてSSに殺到することが予測されるため、日頃から車はガソリン満タンを心がけることが重要です。燃料のメーターが半分程度になったらガソリンを満タンに入れる習慣をつけましょう。また、灯油も1缶多めに備蓄しておくと、冬場は灯油ストーブやコンロに使えるので安心です。
東日本大震災のガソリン不足の教訓を活かそう
東日本大震災でガソリン不足が起きたのは、地震や津波による製油所や油槽所の火災・破損・停止に加え、輸送に使用する道路の寸断や車両が損傷したことも原因です。首都直下型地震や南海トラフ地震のような大規模な地震が起きた場合、石油供給がスムーズにいくよう国によってさまざまな取り組みが行われていますが、個人としても自家用車のガソリン満タンや灯油の備蓄を心がけることが重要です。東日本大震災の教訓を活かして、十分な備えをしておきましょう。
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